男女問題

離婚の際に決めるべきこと

 離婚に際して夫婦間で決めておくべきことは,@財産分与A親権,養育費B慰謝料C年金分割のあたりでしょう。

 @財産分与
 財産分与とは,結婚中に夫婦で協力して作った財産を精算することをいいます。具体的には結婚後に貯めた貯金や購入した不動産などを夫婦で分けることです。ほとんどの場合には,夫婦の取り分は半々とされますが,双方の寄与の度合いによって,その割合が変わることもあります。夫婦が結婚前から持っていた財産や,結婚後でも相続によって取得した財産などは財産分与の対象にはなりません。

 A親権・養育費
 親権者を決めるにあたっては,これまでの養育状況や,今後の養育能力,経済状況などから,夫婦のどちらが今後の子どもの養育者として適任か,ということを考慮して決めることになります。もちろん母親の方が有利になることは多いですが,事情によっては,父親が親権者になることも充分に可能です。
 養育費については,夫婦双方の収入を基準にして金額を決めます。その金額の目安となる算定表がありますので,参考にしてください。
 B慰謝料
 夫婦の一方が浮気をした場合や暴力を振るったために離婚に至った場合には,慰謝料が発生します。ただし,裁判によって慰謝料を請求する場合には,浮気や暴力の証拠が必要になります。最近では携帯電話のメールなどが証拠として出されることが多いですが,そのメールの内容によっては,証拠としてあまり意味のないものであることもあります。

 C年金分割
 婚姻中に夫の扶養家族になっていた妻が,離婚後に厚生年金を受けられないとすると不公平であるため,婚姻期間中に扶養家族として支払っていた分の厚生年金の受給ができるようになりました。

離婚の手続

 離婚の手続としては,@協議離婚A調停離婚B裁判離婚があります。

 @協議離婚
 協議離婚とは,夫婦の話し合いによって,離婚をすることをいいます。協議離婚で最も問題になることは,離婚の際に慰謝料や養育費の支払いの約束をしたにもかかわらず,それがきちんと支払われないということです。養育費の支払いの約束があったり,慰謝料を分割で支払う約束をしているような場合には,公正証書で離婚の協議書を作っておくことをお勧めします。公正証書があれば,裁判を経ることなく相手の給与や財産を差し押さえることができ,回収が容易になります。

 A調停離婚
 調停離婚は,家庭裁判所に調停を行い,そこで離婚の合意がまとまった場合に作成される調停調書に基づいてする離婚をいいます。調停の手続は,裁判所が間に入った話し合いのような手続です。ただ,あくまで裁判所が入るため,法に基づいた話し合いになりますので,自分で行うことも可能ですが,弁護士を代理人に入れた方がスムーズになると思います。

 B裁判離婚
 裁判離婚は,調停の手続で合意ができない場合に家庭裁判所に訴訟を提起し,そこでなされた判決に基づいてする離婚をいいます。離婚の裁判も,通常の裁判と同じように,きちんと主張や立証をしないといけませんので,例え事実はこちらに有利なものであっても,主張や立証をきちんと行わなければ,敗訴する可能性も充分あります。離婚の裁判になった場合には,一度だけでも弁護士に相談することをお勧めします。

内縁,婚約関係

 内縁とは,婚姻届を提出していないが,夫婦と同様の生活をしている関係をいいます。
 内縁関係も,婚姻届を提出していないだけで,実質的には婚姻関係と同視できますので,婚姻関係に準じた法的な保護を受けることができます。内縁関係を不当破棄した場合には,慰謝料が発生しますし,内縁解消のときには財産分与を請求できる場合があります。
 しかし,あくまで法的な婚姻関係にはないため,内縁の夫が亡くなった場合には相続人にはなれませんし,内縁関係で子どもが生まれたとしても,父親が認知しなければ父親との親子関係も確定しません。
 このように,内縁関係は,法律婚に比べて法的に不安定な関係であるといえます。

不倫問題

1 夫婦の一方が不倫したことによって,離婚した場合はもちろん,離婚しない場合であっても,不倫をした夫婦の一方と浮気相手に対して,損害賠償の請求ができます。
 以下,夫が浮気した場合を例に出して説明します。

2 夫婦には,相互に貞操を守る義務(貞操義務)を負っています。夫が浮気した場合,夫と浮気相手が共同して貞操義務に反したということになり,夫と浮気相手が共同不法行為者として,連帯責任を負うことになります。
 よって,浮気相手だけを相手取って請求をすることもできます。ただし,夫と浮気相手とは連帯して責任を負っていますので,浮気相手だけに損害賠償を請求し,浮気相手がその金額を全額支払った後で,浮気相手から夫に対して求償の請求がされる場合があります。

3 慰謝料金額について相場があるということはありません。具体的な事案をもとに,過去の裁判例を参考にして妥当な金額を決めます。
 金額の増減事由としては,婚姻期間,離婚に至ったか否か,当時の婚姻の状態,不貞行為の期間,不倫相手の妊娠の有無,病気罹患の有無等があります。これらの事由を総合考慮して,慰謝料額を算定します。
 よほどの事情がない限りは,300万円程度が上限になるものと思われます。

証拠収集

 離婚の裁判や調停をする場合はもちろん,そこまで至らない場合にも,証拠を集めておくことは交渉を有利に進めるために重要になります。
 最近最も多いのが携帯電話のメールです。自分の携帯に入ったメールはもちろん,相手の携帯の中の不倫相手とのやりとりのメールも証拠として提出されることもあります。不倫相手とのメールは,非常に重要な証拠になりますが,勝手に他人の携帯電話を見ることはプライバシー権の侵害として,逆に慰謝料の請求をされる可能性もあります。ただ,慰謝料の金額はさほど高額にはならないと思われますし,たとえ勝手にメールの写真を撮ったとしても,証拠として使用することはできます。

 暴力を振るわれた場合には,すぐに怪我の写真を撮り,病院に行って診断書を取りましょう。怪我は放っておくと治癒してしまい,証拠が残りませんので,早急に証拠を残す必要があります。

 その当時作成された日記等も証拠としての価値があります。できる限り詳細に,どのような事があったのかを記載しておけば,後に重要な証拠となるかもしれません。日記を書くときは,パソコン等で作るよりもできれば手書きの方が良いと思います。

 興信所を利用する方も多いでしょう。確かに,成功すれば決定的な証拠を押さえることができますが,費用がかなりかかりますし,確実に証拠が得られる保証もありません。興信所の利用は慎重に検討してください。